時代と喋りとお人柄 

静岡県環境・産業保安機構主催による「高圧ガス大会」司会のお仕事。

本番前、司会台にスタンバイしていると、
後ろから
「おっ、今年も宜しくね!」と、
地響きの様な、弾力のある溌剌とした声。
Aさんだ!(名刺交換もしてないが、昨年の印象が強すぎて…。)
年の功70位でしょうか・・・。

弾けるように振り返った私、
「今年も有り難うございます。よろしくお願いいたします。」と
深々お辞儀をすると、
「まぁ、気楽にやってくれや!」と笑顔で応えてくださった。
同時に、
「水ある?」「おいっ、水!」とホテルスタッフに声を飛ばし、
「それ、焼酎だったらね!」と・・・。
(良くないよ。。。酔っぱらっちゃうよ。。。)と心で呟く私に間髪入れず、
「声の調子はどう?カラオケやるといいよ!銀座の恋の物語だね!」と、
艶のある声で茶けっめたっぷりに笑う。
「カラオケお上手そうですね!」と私が返した時には、
既に、挨拶に来られていた他の方と声高らかに言葉を交わされていた。。。

会場全体に響くその会話、
「おーーナイスショーーッ!どう??コロナに殺されてない?」
「あっ、まあ、おっ、お陰様で~」
「まっ、頑張ってね!コロナなんて避けてくよ!ガハハハハ!」

式典が始まった。
少しの緊張感の中、会長挨拶や来賓祝辞など進行していく。
各種団体の表彰式へと続き、それぞれの会長が賞状を読み上げ授与していく。
各会長は、必ず「おめでとうございます。」との声を受賞者にかける。
そんな中、Aさんのその声は、決して滑舌が良いとは言えないが、
なんだか、温かい。熱を感じるというか、熱量が出ている、というか、
弾ける、その「おめでとう!」は確実に受賞者の心に響いていると、端から見ていても感じた。

そして、「大会宣言の採択」へと続き、
とある会長が立派に議長としての役割を果たし降壇すると、
Aさん、すかさず
「ナイスオーーーーーーーン!」

艶のある声が会場に響くーーーぅ!!

必死に笑いをこらえる私。
ここで、バンカーしてはいけない。。。

っておいっ、ここはゴルフ場ではありませんからーーーーーーーーっ!

Aさん、決して身体は大きい方ではないが、
その存在たるや会場の一番後ろからでも分かることでしょう。
オーラ凄いから・・・・!

最近、このような、「豪傑」な方が少なくなったように感じる。
コンプライアンスだセクハラだパワハラだ。。。
何かに怯え、制限されながら、、、という世の中になってしまった。
無難に安全に目立たぬよう際立たぬよう。

新人の頃、上司に、番組の喋りを確認してもらっている時に言われたことが
今でも印象似残っている。

「振り切れたものを元に戻すことは簡単。振り切れる方が難しい。」

自分が書いた原稿、一部思い切った表現が少し恥ずかしく、照れくさく、
顔を赤くしながら読んだナレーションに対し、
このように応えてくれた。

振り切れたらちょっと戻せばいい。

難しいのは、振り切れること。
残念なのは、振り切れないこと。

来年もまたAさんにお会いしたい。
そして、出来れば、ゴルフもご一緒したい。
どんなに私がヘボをしても、
「ナイスオーーーン!」と、豪快に励ましてくれるに違いない・・・。

言葉はその場の空気を変える。
空気はその人の心模様を変える。
人のエネルギーは人に伝染する。

後で調べてみたら、
Aさん、海外にも拠点を持つとても歴史ある大きな会社の会長でいらっしゃった・・・。

「アルバトローーーーースッ」

 

2021.11.11

イベント司会, ナレーション, 日々